「収益認識に関する会計基準」適用による法人税法の改正について

以前のブログでご紹介させて頂きました通り、「収益認識に関する会計基準」が、令和3年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます。
今回は当該会計基準の適用により改正された法人税法上の考え方(平成30年度税制改正)についてまとめてご紹介させて頂けたらと思います。

  • 収益の計上時期に関する取扱い
    ①原則的な取り扱い(法法22の2①)
    資産の販売等に係る収益の額は別段の定めがあるものを除き、その資産の販売等に係る目的物の引渡日又は役務の提供の日の属する事業年度の所得の計算上、益金の額に算入することとなります。

    ②新たに認められることとなった収益の計上時期(法法22の2②)
    資産の販売等に係る収益の額につき一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って当該資産の販売等に係る契約の効力が生ずる日その他の上記①の日に近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合には、上記①にかかわらず、当該資産の販売等に係る収益の額は、別段の定めがあるものを除き、当該事業年度の所得の計算上、益金の額に算入することとできます。

    【例】委託販売を行っている3月決算法人が、X2年3月30日に商品を引渡し、X2年4月2日に仕切清算書を受領した場合には以下の取り扱いが考えられます。

原則的な処理

商品の引渡し日(X2年3月30日)

X2年3月期の事業年度の益金の額に算入する。

認められる処理

仕切清算書の受領日(X2年4月2日)

仕切り清算書の受領日が商品の引渡し日の近接する日に該当し、X3年3月期の事業年度の益金の額に算入することが認められる。

③長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例(旧法63)の廃止
平成30年度改正によりリース譲渡を除く資産の販売等に係る長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例が廃止されることとなりました。
なお平成30年4月1日前に行った長期割賦販売等に係る資産の販売等については、令和5年3月31日までに開始する各事業年度において、当該平成30年度改正前の延払基準の方法により経理した場合には、
従来通り当該特例は適用されることとなります。(平30改正法附則28①、平30改正令附則13①)

④その他税務調整により認められる収益の計上時期(法法22の2③)
資産の販売等に係る収益について、上記②の「近接する日」の属する事業年度の法人税の申告上、税務調整により益金の額に算入した場合には、
当該事業年度の確定した決算において収益計上したものとみなされます。
なお、会計上の収益の計上日が、上記①の「資産の販売等に係る目的物の引渡日又は役務の提供の日」若しくは上記②の「近接する日」としている場合には、
税務調整により、益金認識日を変更する処理は認められないことを注意する必要があります。

従いまして、上記の例においては、会計上3月30日に売上計上を行っている場合、税務調整により4月2日に収益認識を行うことは認められないこととなります。

  • 収益の計上金額に関する取扱い
    ①原則的な取り扱い(法法22の2④)
    資産の販売等に係る収益の額として、所得の計算上益金の額に算入する金額は、その販売若しくは譲渡をした資産の引渡しの時における価額又はその提供をした役務につき通常得るべき対価の額に相当する金額(以下、「法人税法上の時価」)を益金の額に算入することとなります。

    なお一般に公正妥当と認められる会計処理の基準においては、自社ポイントの利用やリベート等を考慮した上で取引価格を算定することから、法人税法上の時価と乖離する場合があり、その場合には法人税申告上、税務調整を行い所得の計算を行う必要があります。

    ②金銭債権の貸倒れ及び資産の販売等に係る買戻しの取り扱い(法法22の2⑤)
    上記①の法人税法上の時価の算定については、金銭債権の貸倒れや買戻しの可能性はないものとして算定する必要があります。
    従いまして会計処理上、取引価格の算定において貸倒れや買戻しの可能性を考慮している場合には、法人税申告上、税務調整を行い所得の計算を行う必要があります。

また当記事では、法人税法にフォーカスしたものとなりましたが、関連する基本通達についても改正が行われておりますので、別の記事にてご紹介させて頂けたらと思います。

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