電子帳簿保存法の概要について
2024年1月1日より、インターネット上のサイトから領収書などをダウンロードしたり、電子メールで受領した請求書などを受け取った場合には、その取引に係る帳簿書類は電子データによる保存が義務化されれました。
電子帳簿保存法は、電子データにより受領したものを電子保存すれば良く、これまで同様に紙で受領したものについては紙で保存すれば、電子帳簿保存法には十分対応しております。
今回は、この電子取引の保存について実務上の対応策を解説していきます。
◆電子取引により保存するための要件について
電子取引により受領した請求書や領収書などの帳簿書類については、保存した取引情報が真実であることを証明するための「真実性の要件」と、保存したデータを容易に確認することが出来るようにしておく「可視性の要件」という2つの要件を満たして保存しておく必要があります。
それぞれの具体的な内容は以下の通りです。
【真実性の要件】
下記いずれかの要件を満たしていること
・タイムスタンプが付された取引情報を授受すること
・取引情報の授受後、7営業日以内にタイムスタンプが付されていること
・訂正や削除した履歴が残るクラウドサービス等で取引情報を保存していること
・「訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を作成しておくこと等
【可視性の要件】
下記全ての要件を満たしていること
・保存するシステムの概要を記載した書類を準備しておくこと
・パソコンやプリンターなどの操作説明書を用意しておくこと
・保存したデータを明瞭な状態で閲覧出来るようにしておき、誰でも速やかに出力できる状態にしておくこと
・電子データのファイル名に「日付・金額・取引先」を記載する
電子帳簿保存法の実務における対応策
①データ保存を行うかべきものがあるかどうか検討する
取引先から受領する請求書や領収書のうち、データ保存を行う必要がある場合には、どういった取引の書類をデータ保存すべきなのか、既に電子データで受領している場合にはどういったものがあるのか等といった、現状の取引を整理するとともに、今後、電子データにより保存する場合には、どういった内容のものが対象となるのか、といった事を検討する必要があります。
②電子帳簿保存法の対応スケジュールを作成する
2022年1月1日に電子帳簿保存法が改正され、宥恕措置として電子データを受領した場合における電子保存は2年間の猶予が設けられました。
冒頭で述べたように、2024年1月1日から電子データにより受領したものについては電子データとして保存することが義務化されることになる為、社内への周知を行い、全従業員がどういった内容のものが電子保存すべきなのか把握しておく必要があります。
電子保存が義務化される電子取引の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
・インターネット上のサイトから行った取引
・電子メールなどで行った取引
・EDIシステムを利用して行った取引など
③必要な作業を整理する
取引や担当者ごとに、電子帳簿保存法に向けて、電子データで受領しているものについてはどういった方法で、どこへ保存しておくのか、紙で受領しているものについてはどのように保存しておくべきなのか等といったように、各担当者で必要な作業を整理しておく必要があります。
④必要な作業を実施する
電子データを保存するにあたって、保存方法にもよりますが、システムを導入する場合にはシステムの操作説明書を備えておく事や、電子データの運用方法などを記載した事務処理規程を整備しておく必要があります。
⑤保存を開始する
2024年1月1日より電子データで受領しているものを電子データにより保存する場合には、どういった内容のものを電子データで保存しているのかといった内容を社内周知するとともに、月単位で電子データにより保存しているものについてはバックアップデータを保存しておくことをおすすめいたします。
⑥データを年度ごとに整理する
電子データは何かしらの原因でデータが消える可能性も十分に考えられます。
そういった不測の事態が発生しても問題とならないように、決算作業が終わる年度ごとにバックアップデータを取得しておくことが電子帳簿保存法に対応する上では重要となってきます。
まとめ
今回は2024年1月より義務化される電子帳簿保存法について、実務上の対応策について解説しました。
加えて2023年10月よりインボイス制度も導入されて、事業者や経理担当者にとっては事務負担が非常に大きくなる制度が始まりました。
今後はますます経理処理が複雑になってくると考えられますので、お困りの際には是非弊社までご相談下さい。