「収益認識に関する会計基準」が、令和3年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます。
適用上の5つのステップのうちの2つ目に「契約における履行義務の識別」があります。1つの契約に複数の履行義務が含まれる場合には、各履行義務が収益の認識単位となるため、ステップ2において、それぞれが別個の履行義務にあたるかどうかの判断をしなければなりません。今回は、このステップ2における会計処理と税務処理をご紹介したいと思います。
- 会計上の取扱について
典型的な例をあげるとイメージがしやすいかと思います。典型例をベースにご紹介しますと、機械の販売契約と保守サービスを一体として契約する場合があります。
この点、機械に対する保守サービスが、製品が合意された仕様に従って機能することを保証する「品質保証」の場合と、顧客にサービスを提供する保証を含む「サービスを提供する保証」の場合とで会計処理は異なってきます。
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- 品質保証の場合
「品質保証」の場合の例として、家電を購入して、1年間のメーカー保証が付くことが一般的かと思います。これは、メーカー側が、合意された仕様どおりに製品が機能することを保証しているものといえます。この場合は、保証は財またはサービスと一体のものであり、別個の履行義務とはみられません。従って、将来の費用について、合理的な見積を行い、製品保証引当金等、引当金を計上します。
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- 顧客にサービスを提供する保証の場合
「サービスを提供する保証」の場合の例として、家電量販店でメーカーの保証とは別に、家電量販店側が独自に顧客の責任による故障等にも修理を行うといった長期保証があります。このように、大手家電量販店で、「購入価格の××%分追加で支払うと5年保証がつきます」といったケースがあると思いますが、これは「サービスを提供する保証」に該当すると考えられます。
サービスを提供する保証である場合は、この保証を履行義務として別途識別し、取引価格を財またはサービスとこの保証サービスに独立販売価格の比率で配分することになります。保証サービスについては、財またはサービスを提供するまで、契約負債として計上します。そして保証期間に渡って、財またはサービス提供に合わせて、契約負債から収益に振替処理をおこなっていくことになると考えられます。
- 税務上の取扱について
- 品質保証の場合
「品質保証」の場合は、税務上も会 計と同様、別個の履行義務として識別しないとされています。しかしながら、製品保証引当金の繰入・戻入については、申告調整の対象となり、この点は「収益認識に関する会計基準」導入前と変わりはありません。
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- 顧客にサービスを提供する保証の場合
「サービスを提供する保証」の場合は、税務上も会計と同様に履行義務として識別します。そして、会計と同様に履行義務の充足に応じて、税務上も収益を認識していていくことになると考えられます。