令和4年1月より電子取引を行った場合には、電子データでの保存が義務化されます。
電子取引とは過去のブログでも記載した通りですが、取引に関して相手から受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類を電磁的方式により行う取引をいいます。
このうち「見積書」については1つの取引でも複数の見積書を授受するケースがあるため、最終的に合意に至った見積書のデータのみ保存すればよいのか、最終合意に至る前に授受した見積書のデータも含めて全て保存する必要があるのか疑問が生じております。
今回は、見積書の金額に変更が生じた場合の電子データの保存について説明したいと思います。
電子帳簿保存法取扱通達10-1《電磁的記録等により保存すべき取引情報》(2)では、「取引情報の授受の過程で発生する訂正又は加除の情報を個々に保存することなく、確定情報のみを保存することとしている場合には、これを認める。」
と規定されており、最終合意に至った見積書のデータを保存すれば良いように読み取れます。
しかし、同通達の解説によると「訂正または加除のデータ」とは、確定データに至る前の情報のことであり、見積書の見積金額を変更した場合には変更前の見積書と新たな見積金額として確定した見積書の各々を保存する必要があります。
実務的な対応として下記のようなケースをご紹介致します。
- 金額の交渉により、見積書(PDF)をメールで複数回受領した場合 ⇒最終合意に至った見積書のみでなく、変更前の見積書も含んだ全ての見積書(PDF)を保存する必要があります。
- 最初に受領した見積書(PDF)の記載内容に誤りがあり、先方から訂正後の見積書(PDF)を受領した場合 ⇒見積書(PDF)の記載に誤りがあった場合には、その誤りがあった見積書(PDF)は確定データではないので、確定データである訂正後の見積書(PDF)のみを保存することが認められております。
- A社、B社、C社の3社より相見積もりを取り、各社からメールで見積書(PDF)を受領した場合(最終的にはA社と契約) ⇒最終的に契約に至ったA社だけでなく、B社、C社も含んだ3社全ての見積書(PDF)の保存が必要となります。